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高橋さんの藁ボール
つくり手高橋久たかはし ひさし
レコメンバー田澤紘子たざわ ひろこ

推薦文

高橋さんいわく、本格的な藁仕事に備えて、手を慣らすために縄を綯うのだそう。藁が、高橋さんの手を通して、するすると一本の縄になっていくのにも驚いていたのに、それがくるくると丸められて藁ボールになって、また驚いた。「こんなのもらって、嬉しいの?」と高橋さんに驚かれた。

農閑期の冬になると、農家では刈り入れた藁で縄を綯い、お正月飾りのしめ縄や春からの農仕事に備え、身体を慣らす。仙台市・荒井に住む高橋さんもその昔おじいさんから縄綯いを教わり、生活の中の道具を自分たちで作る技術を身につけた。三本塚地区の稲荷神社のしめ縄は高橋さんが作っているもので、縄の太さや大きさも思いのまま。
荒井駅にある『せんだい3.11メモリアル交流館』で沿岸地域の文化を伝える仕事をしていた田澤さんは、正月の輪通し作りをお願いしに訪れた高橋さんの家で、「輪通しよりまずこれを作るんだ」と言われ、一緒に藁ボールを作ることに。縄綯い初チャレンジで苦戦する田澤さんの隣で、高橋さんの手がするすると藁を撚りあわせ、みるみるうちに丸い形に整えていった。貰った藁ボールを田澤さんが使えずに大事にとって置いていると聞き、高橋さんは「何?使わねえの?使ってなんぼだべ」と呆れたように笑ったという。