49 善男さんが育て続ける ハツキネモチ

善男さんが育て続けるハツキネモチ 善男さんが育て続けるハツキネモチ
つくり手佐藤善男さとう よしお
レコメンバー田澤紘子たざわ ひろこ

推薦文

善男さんが50年以上前に購入して以来、「来年もまた食べたい」と思い続けて毎年自家採種を続けてきたもち米『ハツキネモチ』。津波で次の春に蒔く予定だった種もみが流されても、再び手に入れることができたのは、善男さんの話を聞いた人たちの「食べてみたい」気持ちが重なった結果だ。

善男さんは生まれ育った仙台市・荒浜で、自家採種をしながら、昔から変わらない手仕事で農業を営んでいる。善男さんだけが作っていたハツキネモチは、津波によって、種が小屋ごと流されてしまい、再開のめどが立たなくなっていた。荒浜で聞き書きをしていた田澤さんがそれを知り、福井の研究所に問い合わせたところ、種が保存されていることが判明し、分けてもらった種もみから栽培が再開された。最初の収穫の時は次の春に捲く種を残すために食べるのをぐっと我慢、2014年にようやく口にすることができた。
災害が相次ぎ、種苗法の改正案も進み、自分が好きな野菜の種を自分で取って育て続けることが困難になってきている中で、田澤さんは、「これほどまでに善男さんを畑に向かわせる力ってなんだろう」と憧れを抱きながら、いまも善男さんの畑に足繁く通い、毎年ハツキネモチの新米の販売を手伝っている。