48 アイさんの唄

つくり手 | 庄司アイしょうじ あい |
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レコメンバー | 磯崎未菜いそざき みな |
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推薦文
「何もかも流されたけど、民話は残った」と語るアイさんの身体に保存された物語や唄の数々。彼女の声のなかには、連綿とお話を語り継いできた人々の声が含まれている気がする。子守唄をうたうことは、自分の母の声をもう一度呼び起こす行為なのかもしれない。
山元町で民話を語り継いでいるアイさんは、唄もたくさん知っている。幼い頃に母から聴いた子守り唄、近所のおばあさんがうたっていた守り子唄(子守りをする子どもらがうたう労働歌)、そして、友だちと手遊びしながら口ずさんでいたさまざまな遊び唄。唄はアイさんの生活の隅々に結びつき、誰に教わるでもなく、いつでも当たり前のようにそこかしこにあったという。
土地に根付く唄を調べ、作品をつくっている磯崎さんとともにアイさんの自宅を訪ねたとき、どんな唄をうたっていたのですか? と尋ねると、歌い出しを口ずさんでいたアイさんの表情がゆるみ、笑顔になっていった。そして、磯崎さんの手を取り、一緒に踊りながら、手遊び唄の振り付けを伝授してくれた。
そのときのアイさんは幼少時代に戻っているかのようで、磯崎さんは、「アイさんにとって、唄が幼少時代の記憶を呼び覚ます装置となっていると感じた」という。