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荒浜念仏講
つくり手荒浜念仏講のみなさん
レコメンバー田澤紘子たざわ ひろこ

推薦文

仙台市・荒浜地区の女性たちによって、口伝によって唄い継がれてきた<荒浜念仏講>。手の甲に歌詞を書いて、田に手植えをしながら覚えたこともあったそうだ。ほかの地区にも念仏講はあったようで、隣の新浜の方の「荒浜はお念仏が残っていていいなぁ」という呟きを聞いたことがある。

浄土寺のある荒浜では、女性たちが念仏講に参加する慣習があった。住民が亡くなるとお通夜で御詠歌(ごえいか)をうたって葬い、年中行事のお盆の灯篭流しで念仏を奉納する。毎月25日の夜に御詠歌の練習の集いがあり、歳を取って声が出なくなると引退して、お嫁さんを後任に指名して世代交代していたという。御詠歌は地域でうたい継がれていくうちに節回しが変化し、歌詞が追加され、次第に地区独自のものになっていった。震災で集落が津波に流され、人々の住まいが離散した後も、念仏講の集いは震災前からのメンバーで継続されている。貞山堀で再開された灯篭流しでは、浄土宗吉水講の詠唱と共に、お盆で唄うときの恒例の唄を念仏講の女性たちで詠唱し、奉納している。レコメンバーの田澤さんは、荒浜のかつての暮らしを聞き取りする中で、「集落の女性たちにとっては、念仏講が情報交換の場としても機能し、生活に深く結びついていたのでは」と考えている。

音源:2017年8月19日 灯籠流しでの念仏詠唱奉納
提供:永幡幸司(福島大学共生システム理工学類 教授)