32 蒲生の日和山登山

蒲生の日和山登山 蒲生の日和山登山
つくり手中野ふるさとYAMA学校と登山客たち
レコメンバー中村佳史なかむら よしふみ

推薦文

震災によって“日本一低い山”となった蒲生の日和山。富士山の山開きに合わせて毎年7月、大人たちが楽しく、しかし“真剣に”標高3メートルの日和山に挑む。そこは、元住民たちと、震災前にここに確かにあった賑やかなりし街の姿や人々の営みを語り合える場である。

漁師が天候を読むために築かれた蒲生の日和山は、古くから地域の名所。干潟の野鳥観察や初日の出、散策を楽しむ人びとの憩いの場である。津波によって、その標高が6メートルから3メートルに削られた後も、蒲生の人たちにとっては変わらずに「まちの誇れるシンボル」で在り続けている。
山開きは震災前もおこなわれていた行事で、現在は元住民たちによる『中野ふるさとYAMA学校』が中心となって開催。毎年区画整備によって登山道は変わるが、伝統ある中野小太鼓の披露や高砂神社での安全祈願は欠かさない。地域の人も初めて訪れる人も、老若男女揃って本格的な登山装備で集合し、7段の階段を一歩一歩踏みしめて登頂すると、まるで山が一回り大きくなったようにも感じられるという。
山開きは年に一度、大人たちが本気で遊ぶ日であり、来年も笑顔で再会しようと約束しあう集いの場でもある。東京在住の中村さんはこれまでに3回参加していて、来年は2歳になる息子さんと一緒に登り、史上最年少登頂記録を狙っている。