31 逐次刊行物《派》

逐次刊行物《派》 逐次刊行物《派》
つくり手伊藤豊蔵いとう とよぞう
レコメンバー細谷修平ほそや しゅうへい

推薦文

伊藤豊蔵さんの表現活動は、主にことばを綴ることであり、豊蔵さんのいう「詩のようなもの」として展開されています。豊蔵さんの体内で反芻されたさまざまな思想や哲学が、ことばを綴るというアクションによって展開されていきます。そのひとつが《派》です。

レコメンバーの細谷さんとともに伺ったご自宅は、豊蔵さんが制作したコラージュ絵や書き溜めた紙の束であふれていた。部屋の奥には、ぎっしりと大量のノートが詰まったダンボール。日々欠かすことなく、驚異的なスピードで生まれることばや絵。
「肉筆で書かれた生原稿は、“ことば”による世界との格闘の痕跡であり、ペンの書き跡には肉体による意志が感じられる」と細谷さんは話す。
豊蔵さんは、若い頃から表現に関心を持ち、気になる人に会いに行ったり、作品を鑑賞する旅に出たりしていたという。作品には、影響を受けたというシュルレアリスムや、クルト・シュヴィッタースらによる<ベルリン・ダダ>のような、自由への意志もあわられている。長年病を抱え、ままならない現実に対し自己を確認する術として、パワフルな制作は行われ続けている。