20 土地との関わりの中で 描かれる絵画たち

土地との関わりの中で描かれる絵画たち
つくり手加茂昂 かも あきら
レコメンバー瀬尾夏美せお なつみ

推薦文

加茂さんは、広島や水俣、福島などに長期滞在し、描く行為を通して、人や土地、過去の出来事を知ろうとするなかで、絵画を立ち上げています。描かれた絵画たちが、土地の人たちや加茂さん自身を支えてくれている気がして、その関係性に惹かれます。

震災のとき「絵画に何ができるのか」がわからなくなっていた加茂さんは、ボランティアとして訪れた石巻で、被災した商店のシャッターに絵を描いた際、地元の人に「灰色の景色に色がついて嬉しい」と言われ、「絵画には何かができる」という感触を掴む。
その後、災害や核について考えながら制作を続けてきたが、土地との関わりの中で思考し、制作するようになったのは、2014年から3年間参加した対馬でのアーティスト・イン・レジデンスで土地の人の話を聞くようになってから。以来、広島や水俣、富岡を訪れ、語り手が大切にしている景色の現在地を案内してもらい、スケッチをし、聞かせてもらった記憶の断片を想起したり、残された表現の痕跡をなぞったりしながら、その人自身の姿を含んで景色を描く“光景画”を描いている。
自身も画家である瀬尾さんは、実際の土地や人と向き合いながら、描くという行為でしか掴むめないイメージを表そうとする加茂さんに憧れつつ、共感しているという。

*本展出品作 「墓守り2」(2018)