17 荒浜の貴田喜一さんの畑

荒浜の貴田喜一さんの畑 荒浜の貴田喜一さんの畑 荒浜の貴田喜一さんの畑
つくり手貴田喜一きだ きいち
レコメンバー三浦忠士みうら ただし

推薦文

津波で何もかも流されてしまったかに見える仙台市若林区の荒浜のまち。貴田喜一さんはそこで一人こつこつと美しい農園をつくり、様々な作物を育てています。風土を読み込み美味しい作物をつくるために計算し尽くされたその設えは、もはや表現だと思います。

『荒浜再生を願う会』の活動拠点だった荒浜ロッジを運営する喜一さん。「このまちに賑わいを取り戻したい」という思いは、“集いの場づくり”としても表現されている。人が集まったときにふるまわれるのは、手作りの漬物や味噌、新鮮な野菜などの荒浜の味。喜一さんは、震災後も荒浜で黙々と畑を耕し、野菜を作り、その味で人を喜ばせ、集いの場を盛り立てる。もともと建築に関わる仕事をしていた喜一さんはとても合理的な人で、その畑もまた徹底して美しく、荒浜の風景の一部を彩っている。
実った野菜はロッジの片隅で無人販売されており、レコメンバーの三浦さんは、採算を取ることよりもこの場所に人が訪ねてくることに重きが置かれているようにも見えるありようにも、喜一さんの荒浜への深い愛着が感じ取れると語る。三浦さんはもともと海辺で働いていたが、震災後は近寄り難く感じていた。けれど、喜一さんのつくる集いの場に参加することで、海辺での楽しい時間や思い出を重ねていくことができている。